発売から20年。鹿番長の「アルミロールテーブル」がベストセラーになるまで【勝手にレジェンドギア表彰】
そのレジェンドギア、表彰していいですか?
日々進化を遂げるアウトドア業界。たくさんの新商品が生まれては、時代の流れとともに消えていきます。
そんな中、発売から数十年経っても姿を変えず、いまだに多くのキャンパーから絶大な支持を集める「レジェンドギア」が存在しています。
誰もが認める逸品の裏には、キャンパーを魅了する開発ストーリーが眠っているはず。
本企画はCAMP HACK編集部が、「レジェンドギア」の開発者にスポットライトを当て、日頃の感謝をこめて“勝手に”表彰する連載です。
キャプテンスタッグ「アルミロールテーブル」
今回の「レジェンドギア」は、言わずと知れた名作、キャプテンスタッグ「アルミロールテーブル」。
老若男女、初心者から玄人まで、あらゆるキャンパーに愛用され、キャンプ場でも必ず目にすると言っていいほどのアイテムです。
登場したのは、今から20年前。大手アウトドアブランド「キャプテンスタッグ」から発売され、今やコンパクトテーブルの中でも販売台数は随一。
まさにレジェンドたるにふさわしいギアといえるでしょう!
開発秘話を教えてくれたのは、この人
発売当時、反応は微妙だった
──「アルミロールテーブル」は最初から大ヒット品でしたか?
堤・田中:今でこそ、「鹿番長のアレ」と言われるほど、知名度を獲得した「アルミロールテーブル」ですが、発売当初の反応は現在の売れ行きからはほど遠かったです。
まず、この商品の発売年は2002年、今から20年前です。その頃は第一次キャンプブームの後半で、ファミリー層が多く、大きなテントと大きなテーブルが市場のメインアイテムでした
当然、「ソロキャンプ」なんて言葉もなく、ハイスタイルなギアが中心だったキャンプシーンで、コンパクトテーブル自体の需要が少なかった印象です。
そのため、最初はツーリングやお花見でサクッと使える嵩張らないテーブルとしてホームセンターなどに並べてもらっていました
──人気に火がついたきっかけは?
堤・田中:大きなキッカケとなったのは、インターネットの普及と『ゆるキャン△』効果です。
Amazonなどで、ユーザーさんがクチコミを書き込み始め、「手頃だけど使えるテーブル」として、評価してもらえるようになりました。
その後、『ゆるキャン△』の漫画とアニメがスタート。主人公が使っているギアの中に「アルミロールテーブル」があったことで、人気が爆発。生産が追いつかなくなるほど販売数が上昇しました
クチコミが増えてきた頃でしょうか。キャプテンスタッグが「鹿番長」と言われだしたのは。「アルミロールテーブル」はその代表作だから、「鹿番長のアレ」と呼ばれています。
ちなみにこの「鹿番長」、某掲示板発の愛称だったのですが、今では弊社で商標登録して公式で使っています(笑)
開発アイディアはひょんなことから
──「アルミロールテーブル」を作ったきっかけは?
田中:開発当時は第一次キャンプブームが落ちつき始めた頃。そんなときに、社長が海外からまだ国内には少なかったコンパクトなテーブルを持ち帰ってきたんです。
さっそくサンプルを預かって、ツーリングで使ってみました。そしたら組み立てパーツが多く、初見でかなり手こずって……
しまいには、夜の原っぱにパーツを落として紛失しそうになったんです。かなり焦りましたよ、社長から預かった唯一のサンプルなので
その経験から、「コンパクトだけど部品が一体化したテーブル」が必要だと感じました。
さっそく設計担当の堤さんに相談して、「どうにかしてくれ」と。無茶ぶりでしたが、すんなり「アルミロールテーブル」の原型となるサンプル品を持ってきて。「こいつ天才か!」と思いました
──綺麗に折りたためる構造は大きな特徴です。アイディアはどこから?
堤:設計の肝は、アルミの天板をフラットに保つバーの構造にあると思いました。そのため、まずはバーの固定方法、収納方法をあれこれ考えました。
試行錯誤しているうちに、脚にバーを回動可能な状態で固定し、脚をハの字に開くとバーが脚と天板に挟まれて固定される方法を思いつきました。
さらに、収納時にバーがきれいに収納されるよう脚の取り付け位置を調整して、パーツを一体化させつつコンパクトに収納できるアイディアに行きつきました
とはいえ、その頃はキャンプ事業部も20、30代の若いメンバーが多くて、自分も入社数年目の新人。開発担当の田中さんからの要望に応えるために、とにかく必死でした
コストダウンしたら完成度があがった
──商品開発で一番大変だったことは?
堤・田中:一番、苦労したのはコストダウンです。「アルミロールテーブル」を含め、キャプテンスタッグの大きな魅力の一つは価格の手頃さです。
しかし、開発当初の想定価格は4〜5000円。ECサイトがまだなく、ホームセンターの行楽売り場で、小さなテーブルがこの価格で売っていても選んでもらえません。
設計はできたけど、どう原価を下げるか。これに時間も労力もアイディアもたくさん使いました
やはりお金がかかるのは素材。だから、素材量が多い天板の裏面をくり抜いてみたんです。これが結果的に大正解でした。
まず、使う金属が少なくなるので、ギアの重量が軽くなる。さらに、くり抜いた部分にスペースができ、綺麗に折り畳めるようになりました。
キャプテンスタッグの醍醐味は機能と価格の折衷案。「アルミロールテーブル」はコストダウンにより機能性が向上したその代表例とも言えます
──コンパクトでも耐荷重30kg。この頑丈さも人気の理由ですよね
堤・田中:コンパクトテーブルでここまでの耐荷重が高いアイテムはそうありません。
開発当初は、脚部に厚みのあるアルミ素材を用いる予定でしたが、価格を抑えるためにスチール製に変更。スチールはアルミより強度があるので、ギアの重量をほとんど変えず、耐荷重をさらに上げる事ができました。
ここでもコストダウンが功を奏しました。
この高い耐荷重のおかげで、今ではクーラーボックスのスタンドなど、テーブル以外の使い方をしているユーザーさんもいます
意匠権が切れても売れ続ける
──発売から20年。改良などはありましたか?
堤・田中:基本的な設計は発売当時のままです。大きな改良もありませんでした。
1点、ユーザーからのフィードバックを受けて、天板の端にある補強パーツだけ、外れにくいようリブが付くように変更を施しています
ちなみに最近、「アルミロールテーブル」は意匠権が切れました。その影響か、安価な模倣品も多く発売されていますが、売り上げは落ちていません。
これも徹底したコストダウンの効果だと思っています。「鹿番長のアレ」の偽物より、本物を欲しいと思ってくれる人が多いのは素直にうれしいです
──「アルミロールテーブル」には派生品もたくさんあります
堤・田中:そうですね。半分ほどにサイズを小さくした「アルミロールテーブルナノ」や「アルミソロテーブル」など、それぞれのキャンプスタイルに適した派生品を開発してきました。
その他にも、様々なカラーバリエーションやコラボデザインもあり、今後も商品展開は増やしていく予定です
目指すのはキャンプ業界の繁栄
──ギア開発にかける想いを教えてください
堤・田中:「キャプテンスタッグ」らしさは、良い商品をいかに手頃な価格で作るか。誰でもコストをかければいいものは作れます。難しいのは、手頃だけど満足度の高いギアを作ること。
どんな業界でも新規のビギナーが入ってこないと廃れてしまう。だからキャンプに慣れている方にも、そうでない方にも響くプロダクトを開発しなくてはいけません。
「次もキャンプに行こうかな」。私たちの作った商品でそう思ってもらえることを目指していますし、その自信もあります
最近は、低価格で品質の高い海外メーカーなども増えていますよね。ほかにも、若い人たちが立ち上げたブランドからは斬新で素晴らしいギアも発売されています。
それを驚異に思いつつも、ときたま「アルミロールテーブル」を開発した当時を思い出すんです。
僕らも若いときに、がむしゃらに作っていたなと。だから、一緒にアウトドア業界を盛り上げる仲間として、今後もお互いに切磋琢磨しながら、キャンパーの皆さんに認めてもらえる商品を開発していきたいです
銘品を生み出してくれてありがとう!
独創的なアイディアと徹底したコスト意識、そしてユーザーへのやさしさ。
「キャプテンスタッグ」の企業マインドが詰め込まれた「アルミロールテーブル」がここまでキャンパーから支持されているのは、ある意味では必然と言えるでしょう。
誰もが認める素晴らしいギアを生み出してくれたこと、勝手ながら「レジェンドギア」として表彰させてください!
今回は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
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Source: nap-camp
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